クリスマスプレゼントは王子さま






“今まで通りに孤独に”

“あなたに家族は似合わない”

“愛など不要” ――。


敵であろう男のあまりの言い種に、私は頭に血がのぼって……のぼりすぎて。どこかがぷっつりとキレた。


弟たちの食事風景を寂しそうに見ていたレン王子。母親と3つまで一緒に暮らしていたというけど、たぶんそれ以降は何らかの事情で引き離されたんだ。

誰だって家族のぬくもりを知っていたら、それを欲しく思わないはずがない。


私は鼻と口を覆っていたハンカチを取ると、キッと目の前に立つ男を睨み付けた。


「勝手なことを言うな! このバカ! 誰に何が必要かなんて本人が決めること。余計なお世話だわ! 少なくとも今の私にはレンが必要なんだから。あんたの身勝手な寝言は聞いてるだけで虫酸が走るわ! このたわけ! おたんこなす! おまえのかーちゃんデベソ!」


とまるっきり子どもな罵倒をした後。頭がくらくらして壁に倒れ込んだ。


「んだと……この!」

「翠様!」

間宮さんが私に駆け寄るのと、違う男が銃を向けたのはほぼ同時で。彼女が私に覆い被さり、ドンッという鈍い音が聞こえたのはほどなくして。


ち、と誰かの舌打ちがした後に長身の男の声が静かに聞こえた。


「やめろ。レン王子……やはりあなたは動きましたね。どうやら今回はこちらが甘かったようだ。今日のところはこれで引きましょう。ですが必ず“Ja”と言わせてみせますからお忘れなきように」


不思議なほどにあっさりと敵は去っていって、すぐにエレベーターの灯りがついたけど。


「レン王子!」


皐月さんの悲鳴に近い叫び声で、急いで立ち上がり知った。


レン王子が、私を庇ったために撃たれていたのだと――。

< 71 / 124 >

この作品をシェア

pagetop