クリスマスプレゼントは王子さま
“今まで通りに孤独に”
“あなたに家族は似合わない”
“愛など不要” ――。
敵であろう男のあまりの言い種に、私は頭に血がのぼって……のぼりすぎて。どこかがぷっつりとキレた。
弟たちの食事風景を寂しそうに見ていたレン王子。母親と3つまで一緒に暮らしていたというけど、たぶんそれ以降は何らかの事情で引き離されたんだ。
誰だって家族のぬくもりを知っていたら、それを欲しく思わないはずがない。
私は鼻と口を覆っていたハンカチを取ると、キッと目の前に立つ男を睨み付けた。
「勝手なことを言うな! このバカ! 誰に何が必要かなんて本人が決めること。余計なお世話だわ! 少なくとも今の私にはレンが必要なんだから。あんたの身勝手な寝言は聞いてるだけで虫酸が走るわ! このたわけ! おたんこなす! おまえのかーちゃんデベソ!」
とまるっきり子どもな罵倒をした後。頭がくらくらして壁に倒れ込んだ。
「んだと……この!」
「翠様!」
間宮さんが私に駆け寄るのと、違う男が銃を向けたのはほぼ同時で。彼女が私に覆い被さり、ドンッという鈍い音が聞こえたのはほどなくして。
ち、と誰かの舌打ちがした後に長身の男の声が静かに聞こえた。
「やめろ。レン王子……やはりあなたは動きましたね。どうやら今回はこちらが甘かったようだ。今日のところはこれで引きましょう。ですが必ず“Ja”と言わせてみせますからお忘れなきように」
不思議なほどにあっさりと敵は去っていって、すぐにエレベーターの灯りがついたけど。
「レン王子!」
皐月さんの悲鳴に近い叫び声で、急いで立ち上がり知った。
レン王子が、私を庇ったために撃たれていたのだと――。