君に会えたら伝えたい事がある。
ある日の夜、学食でいつも通りクラスメートと夕飯を食べているとイタリア人のアルベルトが僕に、体育館でフットサルするからこないかと誘ってきた。
僕は特に課題も無いし体を動かしたかったから行くことにした。
その日は10人の生徒が体育館に集まって2時間ほど試合をしてそろそろ帰るかとみんながゴール前でしゃがみこんで話していると、入口の方からコツン、コツンと誰かが歩いてくるのが音が聞こえた。


「ハナ、今来たのかよ。」僕の隣に座っていたアルベルトが歩いてこっちに向かってくる彼女に言った。彼女が歩くたびに彼女の履いているハイヒールがコツンコツンと体育館を鳴らした。
「ごめん。今、ミーティング終わって」彼女はアルベルトの前に立ち、アルベルトの頬に挨拶のキスをした。

「この子はハナ、サッカーできるから次から参加するけどみんな問題ない?一応女の子だからさ」とアルベルトはみんなに彼女をそう紹介した。僕を含めた半分の生徒がこの10cmもあろうハイヒールを履いている女の子がサッカーができるなんて言われたところで想像がつかなかった。
「ボールかして」ハナはそういうとハイヒールを脱ぎ裸足でリフティングをやってみせた。
彼女は上手にボールをひざの下の高さにキープするようにリフティングを続けた。
誰もが驚いたし「俺なんかよりうまい」というやつもいる。
彼女は一通りボールを足で挟んだり回したり、テクニックをみせて満面の笑みで得意げに「うまいでしょ」と聞いてきた。
「すげぇ、うめぇ。どこでそんなの習ったの」僕は彼女にものすごく高いテンションで聞いた。
「日本で10年間くらいサッカーならってた」彼女は笑顔で答えた。
「これできる?」僕はそう言って彼女からボールを受け取りリフティングを始め肩と首の間あたりのところでボールを止めてみせる。

彼女はそれを見て
「そんなの簡単だよ」と僕の真似をする。
「張り合おうとするなよ」とアルベルトが言ったところでみんなが僕のことを笑いだす。
「でも今日はもう終わりにしようって話だからまた今度な。連絡するから来いよ」
アルベルトはそう彼女に言うと彼女はわかっと返事をした。
「この後どうする?俺、着替えてシャワー浴びたら飲みに行くけどハナもくる?」アルベルトがハナに話しかける。
「そうだね。やることないし行くよ。みんなで行くの?」
「俺とレオは確実に行くけど」
ハナは少し考えて行くと言った。


これが忘れもしない、僕が初めて彼女と言葉を交わした日だった。
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