君に会えたら伝えたい事がある。
次の日、僕は珍しく早く起きたので朝食を食べに学食のレストランまで行くことにした。
僕の学食は基本ビュッフェスタイルとなっていて調理科の下級生が日替わりで作っている。
基本3食すべて学費に含まれているので無料みたいなものだ。
一つだけ憂鬱なのは学食に行く時も寮の中にいる時も常に調理科の生徒はコックコート、国際ビジネス科はスーツと名前と国籍の国旗が印刷してある名札を着用して行かないといけないことだ。

僕が席に着こうとすると向かいのテーブルに僕のクラスメイトのジョージ(メキシコ人)とルームメイトでもクラスメートでもあるクラウディオ(コロンビア人)
そして何故だかハナが楽しそうに喋りながら朝食をとっていた。
僕に気がついたクラウディオが僕を呼んだので僕は必然的にハナの横に座って朝食をとることになった。
「おはよう」彼女は僕のに向かって笑顔で言った。
「おはよう」僕が彼女に挨拶をすると、すぐジョージが
「アレックス、この日本人めちゃくちゃサッカーうまいって知ってた?俺さっきフェイスブックに投稿してあるビデオ見てビビったんだよ」とただでさえでかい目をさらに大きく丸くして言った。

「知ってる」僕が彼にそう言うと
「え、なんで知ってるの?」とハナは不審者を見るような目で僕を見て聞いてきた。

「なんで?って昨日、僕、体育館にいたじゃん。え、まさか覚えてない?」
彼女はしばらく黙りこんで昨夜の記憶をたどっていた。
「え。。。ごめん」
彼女は本当に僕のことを思い出せない様で、がっかりと切なさが一気に僕に押し寄せてきた。
「あのこれできる?ってリフティングで張り合おうとした奴おぼえてる?」
これで思い出され無かったらどうしようと不安になりながら僕は彼女の目を見つめて言った。
「あぁ!覚えてる!ごめんジャージ姿とコックコートの姿が違って分からなかった。」

そういうと彼女は笑いながら答え、僕の名札を見た。
「アレックスっていうの?うん。。。?タイ?え、タイ人なの?」
彼女はもの凄く驚いて聞いてきた。
それもそのはず僕はブロンドとまでは言えないけれどもそれに近い髪の色で肌も白いし、目は明るめの茶色で今まで人生で一度もタイ人だと当てられたことはない。
「それ、みんな同じリアクションするんだよね。僕、お父さんがフィンランド人だから半分ブロンドの血が流れてる」
「でもヨーロピアンにも見えないけどね。」彼女はそういうと続けて
「どちらかというとヨーロッパ系のブラジル人って感じ。似てるじゃんジョージとかクラウディオとなんとなく。同じ系統だよね。」と言った。
「俺とクラウディオはこんなに髪の毛明るく無いけどね」とジョージがいった。

「アレックスは調理科?1年生?」彼女は無邪気に聞いてきたけれども本当に僕の存在すら知らなかったんだと思うと少し切なくなった。
「いや3年だけど。。。」
「そうなの?私たち今までよく一度も会話したことないって逆に凄くない?だって私、ジョージやクラウディオとは度々話したり飲みにいったりしてたのに、なんで?」

彼女はまるで新しい生き物を見つけたかのように驚いて聞く。
「僕は君のこと知ってたよ。みんなよく噂してたしきっとこの学校の生徒のほどんどが君のこと知ってると思う。」
「それっていい噂?」彼女は少し苦笑いをしながら聞いた。
「よく覚えてないけどみんなフレンドリーだって言ってたきがする。そっちは?どうしてジョージとクラウディオのこと知ってるの?」

ハナが頑張って思い出そうとしているうちにジョージが知り合った経緯を話し始めた。

「俺とクラウディオが大分、前にバーで飲んでたらアルベルトと一緒にバーに入ってきて、ほらあいつスペイン語話せるじゃん。だから俺スペイン語で’前の晩に酔った勢いで知らない女の子とヤったっ’て話したら、ハナ全部理解しちゃってスペイン語で俺に’気をつけなよ’って言ったんだ。それでその流れで4人で飲んだんだよね」

ここでハナはやっと思い出した様子で笑っていた。

「そうそう、私は話半分しか理解してなかったけどね。だってすっとスペイン語で話すんだもん。それに私あの日そうとう酔っ払ってたし」そう彼女がいうとクラウディオとジョージは思い出したかのように笑いだした。
「でもなんでその日アレックスいなかったんだろう?」ジョージが聞いた。
「わかんない。きっと疲れてたんだよ。それに僕お酒飲まないじゃん。」
「えっ、全く飲まないの?」彼女は目を丸くして聞いた。
「うん飲まない」
「宗教的な理由とか?」
「違うよ飲めるけど飲まないだけ。もちろん調理科だからテイスティングとかはするけど」
「タバコは?」
「吸わない。吸うの?」
「私もタバコは吸わないよ。じゃあパーティーとかも行かないの?」
「それは行くよ。踊るの好きだし」
彼女はまた不思議そうな顔をして
「よくあの場所に素面でいれるね」と言った。

確かに彼女の言うとうり素面で踊り続ける子なんてそういるもんではないし実際僕がパーティーにいくと、だいたいみんなハイになってるか完全に酔っ払ってるかの二択しかない。
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