君に会えたら伝えたい事がある。
ホテルのバーは今までいたクラブとは全く雰囲気も違って少し僕には大人びた空間だった。
僕らはソファーにテーブルを挟んで座りアルベルトの横にはハナ、向かい側に僕が一人で座っていた。雑談なんてほぼほぼ頭には入ってこなかった。
僕の頭にはただ「ハナが僕の事を好き」「アルベルトにとってハナは特別な存在」 そして「僕は付き合えない」の3つのフレーズがまだぐるぐる回っていた。
すると今まで気にしたこともないことが気になった。
例えば、アルベルトがよくハナの頭を撫でること、肩に手を回すこと、何気ない仕草に全て彼のハナへの気持ちがこもっているように見えた。ただの思い込みなのか、自問自答を繰り返す。ハナの表情を見は特別アルベルトに気があるようには見えない。彼女はいつものように笑顔だった。
寮の駐車場でタクシーから降りる。アルベルトが全てのタクシー代を払った。ハナとアルベルトはいい感じに酔っ払っていて、数時間前の出来事はまるで無かったかのようだ。アルベルトはハナに部屋まで送っていくと言って僕と玄関で別れた後、ハナの部屋の方へ二人で歩いて行く。僕は一人で彼らとは逆の方向へ、調理科用の寮の方まで歩く。途中で振り返って二人の背中を見ようとしたけれども、もう二人は僕の見える範囲にはいなかった。

自分の部屋に戻ったけれども、クラウディオは帰ってきていなかった。きっと彼女の所に泊まっているんだろう。
すると、ふと、僕は寂しくなった。僕だけが一人ぼっちな気持ちになった。クラウディオにはマリアがいて、レオにはいつだって一晩を過ごしてくれる不特定多数の女の子たちがいて、ハナにはアルベルトがいる。そんな風に僕は考えてしまった。
ケータイを取り出してハナにメッセージを送ろうとしたけれども止めた。もしかしたら、まだアルベルトと一緒にいるかもしれないと考えると余計に虚しく僕は一人を感じた。

アルベルトにとってハナはどう特別なんだろう。考えても考えても答えなんて出ない。
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