強引なキスで酔わせて【完結】~二人のその後 更新中
自宅って
行く宛てがない。
マンションに帰れば、奏汰に会わなけらばならない。


自分でもわからない。
どうして逃げ出したのか?
いや、それ以前に、どうして拒んだのか・・・・・



行き着いた先は、会社だった。
まだ残る明かりに、私の足はフロアへと駆け出していた。


もちろん、そこに残っているのが桐島部長かどうかなんてわからない。
けど、どうしてだかわからないけど、そこに居るのは桐島部長のような気がした。



弾む息を整え、オフィスのドアの前に立つ。
一番上座に座っているであろうその人は、ドアを開ければこちらを向いて座っているはず。


「深月?」


と、背後から、その声がした。
振り返れば、今、一番会いたかった桐島部長が、そこに立って居た。


「きり・・・しま・・・部長・・・」


私の頬を堪え切れなかった涙が伝う。
ポロポロと零れ落ちる涙は、私の頬を濡らしていく。


何も言わず、一歩、一歩、近づく桐島部長に、今にも手を伸ばしてしまいそうになる。
彼にとっては、私はただの部下かも知れないのに。
昨日のキスも、ただの遊びかも知れないのに。


私の目の前まで来た桐島部長はその歩みを止め、その大きな掌を私の頬に寄せた。
その親指で、ゆっくりと私の頬を伝う涙を絡め取り、もう片方の腕で私を引き寄せた。


私の鼻腔は桐島部長の香りでいっぱいになった。





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