ばくだん凛ちゃん
9.父娘暮らし

◎ 透 ◎

暑い夏がようやく終わりを告げようとしている頃。

ハルは妊娠5ヶ月に入ったがいまだにつわりが続いている。
凛の時とよく似ている体の状態だ。

家にいると凛が騒ぐし、授乳で疲れると思うのでミルク持参で外に出掛ける事にした。

一人ならバイクで出掛けたけど。
凛が一緒だから車で。



「へぇ、すっかりパパの顔ね」

久々に寄ったバイク屋さんK-Racingの主ともいうべきか。
高校の同級生の真由ちゃんが凛と僕を見て微笑んだ。

「でも透君がお父さんだなんて、今だに違和感がある」

真由ちゃん、笑いすぎ。
笑いながら真由ちゃんは凛に手を伸ばした。
そのまま凛を渡す。

「凛ちゃん〜、おばさんの家の子にならない?」

兄さんと一緒の事を言ってるよ。

「もうほとんど忘れちゃったけど、懐かしい…」

真由ちゃん、嬉しそうな顔をして凛を抱きしめる。

「子供は何人いても良いわね。
…まあ私はもうないけど」



再婚したら?

思わず言いそうになったけれどそれももうない事は僕にだってわかる。

ずっと真由ちゃんの心の中には…。
真由ちゃんの人生を変えた拓海。
拓海がいなくなった後、ずっと支えてくれた総一さん。
特に総一さんから真由ちゃんは感謝してもしきれないくらいの愛を貰ったからね。
きっとそれ以上の男性は現れない。



「凛ちゃん〜、いい子ね〜」

凛は全く泣かずに、ぐずりもせずに真由ちゃんに抱かれてキャアキャア喜んでいる。

へぇ…

凛、大丈夫な人もいるんだ。

保育園じゃなくてここに預けようか?
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