ばくだん凛ちゃん
18時過ぎ、実家に着いた。

まずは1階の実家へ顔を出す。

この時間なら1階にいると思ったのにな。

「至、ちょうど良かった。
ハルさんと凛ちゃんを下に連れてきて。
食事の用意が出来ているから」

母さんが言う。
その前に連絡して呼んだらいいのに。
人使いが荒い。

外階段で2階へ上がり、チャイムを鳴らす。
その瞬間、慌てて廊下を走る音が聞こえた。

「あ…」

ハルちゃん、玄関を開けて声を上げる。

「…透じゃなくてごめんね〜」

明らかに落胆した顔。
本来ならこの時間、透は家にいておかしくないのにね。

「…いえ。
おかしいなって思ったんですよ。
透なら鍵を開けて入ってくるのに」

ハルちゃんは恥ずかしそうに笑った。

「病院で透に会ったんだ。
…帰りに凛ちゃんとハルちゃんを見てから帰ろうかな、と思って」

「どうぞ」

ハルちゃんの言葉に頷いて僕は家の中に入った。

リビングへ行くと、凛ちゃんがグズっていた。

カバーオールの中で足をバタつかせているのがわかる。

「お昼からずっとこんな感じです」

ハルちゃんは半ば呆れ顔。

「何回おっぱいをあげても、おむつ替えても。
おっぱいが足りないと思ってミルクをあげても。
抱っこしても寝ようとはしません」

ふーん…神経質なのかな。

僕は手を洗わせて貰ってから凛ちゃんを抱っこした。

「透は昼までいたの?」

僕の問いにハルちゃんは頷く。

抱っこして立ちながらユラユラと部屋を歩いてみる。

…寝そうだけどな。

さすがに昼から起きていたら眠くなるだろうし。

ウトウトして寝るかな、と思ったら急に激しくグズり始めた。

…数日前に産まれた凛ちゃん。
貴女の睡眠は何となく貴女のお父さんに似ているかもしれないですよ。

「はいはい、凛ちゃん。
そんなに寝ないならオジサンの家に来るかい?
賑やかなオバサンもいるから、五月蝿すぎて逆に疲れて寝るかもね」

縦抱きにして背中を擦る。

しばらくして大人しくなった。

「あ、そう。
母さんが下に降りておいでって」

僕は凛ちゃんを毛布で包む。

ハルちゃんも頷いて下に降りる準備を始めた。
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