ばくだん凛ちゃん

■ 至 ■

「透がそんな事を?」

僕は凛ちゃんを抱っこしながらハルちゃんを見つめた。

「その日、機嫌も悪くて。
どう接して良いのかわからずに、透がご飯食べている途中で凛を抱いて寝室に行っちゃいました」

ハルちゃんがそんな事をするなんて余程空気が悪かったんだな。

今日も当直明けに透とハルちゃんの家に寄った。
最近、それが当たり前になってきている。
桃ちゃんも僕が当直で家にいない日はここに来て一緒に夕食を作って食べるとの事。
僕は1時間くらい滞在して帰るけど。
まあ、僕達夫婦はお節介、似たもの夫婦ってわけ。

ハルちゃん、母さんに食事を作ってもらっていたのは退院後1週間くらいで後は自分で家で作っている。
いつ、帰って来るかわからない透の食事まで母さんに任せられないって。
そう思ってくれる奥さんで透は幸せ者だよね。

なのに、なんでまたそんな発言を。
…誰かが要らぬ話でもしたか。

「まあ、一度小児科の人たちに聞いてみるよ」

「お願いします!!」

その言葉を待っていたかのようにハルちゃんは頭を下げた。

きっと、ハルちゃんの中では透よりも僕の方が頼りやすいんだろうね。
まあ、透もハルちゃんもお互い好き過ぎてダメな部分があるしね。
仕方のない話かな。
しかし、このままでは本当にお互い爆発した時に危ないな。

それも含めて一度、透と話してみようか。

それにしてもこの二人。
いつまで経っても直球勝負しないな。
昔からそうだけれど。

「おお!凛ちゃん~!!」

今まで寝ていた凛ちゃんは静かに目を開けて僕を見つめた。
前より少しだけ長い時間寝るようになっている。
長い、といっても10分~20分程度。
それでも素晴らしい!!
ちょっとはハルお母さんの空気を読むようになってきたか?

「うぎゃ!」

泣く声も少しだけ大きくなってきたな。
オジサン、毎日見ていない分そんな成長が何気に嬉しい。
おお!!涙も少し出るようになってきたな!!

「ハルちゃん、連れて帰っていい?」

思わず、口から出た。

「それはもう少し先にしてください、お兄さん」

ハルちゃん、苦笑い。

おお!!ハルちゃんも少し成長したかな。
前よりちょっとだけ、余裕があるように見える。

「じゃあ、2人目作る時にでも預かるよ」

「お兄さん!!」

…あれ、ハルちゃん真っ赤。

いや、僕そんなに深い意味で言ったわけじゃないんだけどな。

あ、ごめん。
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