ばくだん凛ちゃん
「ただいま」

家に帰ったのは午後9時過ぎ。
いつもより早い。
けれど、家は静まり返っている。
いつもならハルの声が聞こえるのに。

1階にでもいるのだろうか。

そう思いながらリビングへ。

「あ…」

思わず声を上げて口を押えた。
ハルと凛はリビングで寝ている。
起こしちゃ悪いな、2人に。

僕はそっとリビングを抜けてクローゼットに向かった。
服を着替えてもう一度リビングに戻るとハルが起きていた。

「おかえりなさい、ごめん、寝てた」

バツの悪そうな笑みを浮かべたハル。
僕も微笑んで首を横に振る。
凛は気持ち良さそうに寝ている。

「ご飯の用意をするね」

ハルはそっと立ち上がろうとする。

「透…?」

ハルを後ろから抱きしめた。

「…やっぱり僕が凛の健診をする」

「そう、良かった」

ハルの穏やかな声が聞こえた。
もうしばらく、このまま抱きしめておこう。
凛が生まれてから、ハルの温もりをこの腕でほとんど感じていなかった気がする。

「気が変わってくれてホッとしたわ、ありがとう」

ハルはそう言うと僕の腕を撫でた。
そんなことをしたら僕のスイッチ入りますよ、ハルさん。

ギュッと抱きしめた瞬間。

「うぎゃ―!!」

凛の、猛獣のような泣き声。

「あー、起きた」

ハルは僕の腕を振りほどいて座った。

…当分、お預けを食らうのね、僕。
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