ばくだん凛ちゃん
当直明けの日勤。

午後からの専門外来で乳幼児健診がある。
凛は16時の予約。
その日の最終予約に入っていた。

ハルもその前に産婦人科で検査。
まあ多分、何もないとは思うけど。

産婦人科の江坂先生には僕から一つ、お願いしてある事がある。

多分、後からハルに雷を落とされると思うけれど。



「高石さん、高石 凛ちゃん、5診へお入り下さい」

名前を呼ぶと、周りにいた小児科外来の看護師がニヤニヤしていた。

見て見ぬふり。

「こんにちは」

いつも患者さんに言うように挨拶をする。
ハルの顔が少し怒っている。
その怒り、後でお聞きしますよ。
心当たりが大いにある。

「…こんにちは、お疲れ様です」

いつも来る親子連れとは違う反応が返ってきて、面白い。

「じゃあ、先に身長体重計ろうね」

僕は凛にそう声を掛けた。
ハルに荷物を置くように指示し、ベビーベッドの上で凛の服を脱がせ、オムツも替えるように言う。

後は看護師が手際よく体重計に載せ、身長と体重を計り、メジャーを使って頭囲と胸囲を測定した。

身体的な成長に関しては何も問題はない。

モロー反射も問題ない。

「一般的に4ヶ月くらいまでこういう反応をしますけれど、そのうち消失します。
もし5ヶ月を過ぎても起こるようなら再度受診してください」

ハルは頷いた。

「逆を言えば今しか見られない反応です。
しっかりと楽しんで見ておいてくださいね」

ハルの真っ直ぐな目が僕を捉えた。

意外な顔をしないで欲しい。

僕は一応、小児科医だよ。
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