ばくだん凛ちゃん

□ ハル □

凛と二人で初めて出掛けたのが1ヶ月健診。
ドキドキしながらバスに乗った。
まだ抱っこ紐もベビーカーも怖いのでバギーオールで凛を包んで暖かくして抱っこ。
荷物もあるし、結構大変。

何とか病院に着くと受付で入院時に使っていた移動式の赤ちゃん用ベッドを借りる。

ようやくホッとして凛を下ろした。

自分の方が予約が早いので凛と共に診察室に入った。



担当の江坂先生は凛を見て微笑むと

「順調に成長しているみたいですね。
透先生に似ていますねえ」

と嬉しそうに仰った。

そして私の診察を済ませると、

「うん、問題ないです。
今日から夫婦生活も大丈夫ですよ」

…はい?

「あ、その前に湯船にも入って頂いて問題ありませんよ」

…順番、逆じゃない?

「ところで子供がいる生活にも慣れてきました?」

モヤモヤしていると急に江坂先生が話題を変えてきた。

「ええ…何となく。
ただ、迷う事が沢山あります。
いつもこれで良いのかなって」

凛を見つめて言った。
凛は看護師さんに抱っこして貰って、大人しかった。

「子育てに正解はないと私は思いますよ」

江坂先生は本当に優しい笑みを浮かべて私を見つめる。

「その状況に応じてベストを尽くすしかないと思います。
その子の持つ個性に合わせて」

私は少しだけ考えてから口を開いた。

「…毎日、これでもかっていうくらい、泣いて寝ません。
こちらが疲れ果てそうです」

「そうですね、今の時期は辛いですね。
でも1年後、もっと大変な状況になっているかもしれませんよ。
歩き回ってイタズラばかりとか…」

…考えただけでゾッとする。

「それでも子供のそういう時期って一瞬です。
どうか少しでも楽しんでください。
辛い事ばかりじゃありません。
その中に子供の成長があり、親は大きな感動を貰えたりもします。
些細な事が親も成長させてくれますよ」
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