ばくだん凛ちゃん
耳を塞ぎたくなったその時。
電話が鳴った。

ディスプレイの表示は透。

思わず時計を見る。
今日はもう、一般外来は休診だけど救急外来はしている。
年末年始は忙しいはずだけど。

「はい」

泣きそうになるのを堪えて電話に出る。

「ハル…
大丈夫、じゃないよね」

隣で泣いている凛の声を聞いて透は私に言う。

「…ごめん。
ずっと泣いているの。
お義母さんが来てくれた時は寝てたのに、いなくなったらまた泣いて」

「うん、きっと人肌が恋しいんだね。
とはいえ、ハルがダウンしたら大変。
しばらく泣かし続けても大丈夫だから。
無理のないように。
明日の夕方には帰るから。
それまでは我慢して…」

透の優しい声が耳を撫でる。

「…うん」

我慢してたのに。

目からポロポロと涙が溢れる。

「家に帰ったら凛が嫌がるくらい、僕が抱っこするから、ね?」

「…っ」

嗚咽が込み上げる。
その優しさが更に私の心を揺さぶるの。

「…ああ、もう。
どうしてこんな時に当直なんだろ」

透は自分に対して少し苛立ちを見せた。

「…ごめん、透。
私が頼りないから、ごめん」

これ以上、会話を続けたらお互い駄目になる。



私は通話を切った。



…本当にごめんなさい。
< 5 / 140 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop