ばくだん凛ちゃん
「すっかりお父さんの顔だな」

母さんが予約した料亭で兄さんに言われた。
僕にはそういう感覚がない。

「…僕ってお父さんに向いてると思う?」

もう父親だから変な質問かな。

「昔からそうだけど…。
透、たまに変な事を言うよね」

兄さんがクスクスと笑った。

「それは透が一番知っているんじゃないかな。
向き、不向きなんて簡単な言葉で済ませられる事ではない。
人の親になるという事は」

兄さんはそう言うと、少し離れて座っている父さん、母さん、ハルと凛、桃子さんを見つめた。

「少なくともハルちゃんとの間に子供の存在を望んだのはお前自身だよ。
向き、不向き関係なしに二人に対しては責任を追うね」

それはそうだけど。
今の状況で責任を果たしているのかな、僕って。
家の事に出来るだけ巻き込まないようにハルに配慮したつもりが悉く裏目に出る。
今朝の伯父さん達の件でもそうだ。
前から凛に会いたいと言っていたのはあちこちから聞いていたし、慶叔父さんの大学の保育科の赤ちゃんモデルの話も聞いていた。

ハルに黙って全部断っていたけど。
言う必要はないと思っていたんだ。
どうせ断るんだから。

…家にあんな形で来るとは思わず。
そりゃ、ハル。
怒るよね。

僕がした事って些細な事だけど、信頼関係を壊しかねない。



だから。

凛のお父さん。
ハルの夫。

その役割を果たしているのかな。

そう思うんだ。
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