ばくだん凛ちゃん
僕の心の中でハルなら大丈夫だろう、という甘い考えがあったのは間違いない。

ハルのお母さんが生きていれば、ハルももう少し気を楽に出来たかもしれない。
が、実際に頼ることが出来るのは僕の母さん。
気を使わないわけがない。

ああ、本当にどうしよう。
産後鬱だよ、これ。
ハルは今、自信喪失している。

自殺とか考えないで欲しい。
実際に今まで、色々見てきたしなあ。

他人と接するときは冷静に判断して、お母さんも治療できるように手配して、って出来るんだけど。
自分の家族の事になるとこちらもパニックだ!
どう接していいのか…僕もわからない。

…ハル、どうしたい?
僕は何をすればいい?

と聞きたいけど。

きっと今は家にいて欲しいってなるだろうね。

無理な話だ。

明日の夕方まで…ハルは大丈夫なんだろうか。
いや、でも僕が帰ったところで役立たずか。



「透先生、お願いします」

救急患者がやって来たみたい。

「はい」

僕は小児科救急外来の診察室に入る。
この年越しも忙しくなりそうだな。



気が付けばあっという間に新しい年を迎えていた。
新しい年を迎えて1時間もすると急患は途絶えた。

僕は小児科病棟に向かう。

本当なら家で家族と共に新年を迎えたいだろう子供たち。
それを思うと切ない。

子供が生まれてますますそう思う。

ナースステーションまで来ると

「あけましておめでとうございます」

と看護師長の河内さんに言われた。

「おめでとうございます」

僕も頭を下げる。

「せっかくの家族3人での初めてのお正月、先生お仕事だったんですね」

「そうですね。
押し付けられたんです、勤務指定作っている人に」

「神宮寺先生ですか?」

「そうですねー」

同じ小児科医の神宮寺 速人。
最近出来た彼女と初詣に行きたいと僕に当直を押し付けた。
その彼女と果たしていつまで続くかな。
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