ばくだん凛ちゃん
「もう、余計な事を言う人がいるんだねー!」

家に帰って桃ちゃんに電話するとそういう発言をする無神経さに怒っていた。

「別に他人の子が何を着ようと構わないと思うんだけど。
どうしてそんな事を気にするんだろうね」

本当にそう思う、私も。

「言われてビックリしちゃった」

「だろうね〜。
まあ自分からそんな人には近づいたらダメだよ」

桃ちゃんとの会話はそんな感じで終わった。

夜遅くに帰宅した透にもその事を伝えると

「そういう人は嫉妬深い人が多いよ。
気をつけてね」

そんな風に言われたら怖いんですけど…。

「自分より身なりが良いとか頭が良いとか。
そういう事に腹が立つタイプかも。
その人には絶対に僕の職業を知られてはいけないよ」

透の目は笑っていなかった。
私は頷く。
頷くしかなかった…

何だかなあ。
そんなに気を使わないといけないの?

自分の職業を隠さないといけないなんて。
そんなに虚しい事はない。

「ハル」

透に名前を呼ばれて顔を上げた。

「医師って色々妬まれた羨ましがられたりするんだよ。
でもね、僕みたいな勤務医なんて拘束時間を時給換算したら酷いときなんて1300円くらいしかならない時もある。
それでも普通の人からすれば多いと思われる。
それが本当に幸せか?って声を大にして言いたい。
人の命が掛かっている仕事の時給が1000円台。
どう思う?」

透の目は真っ直ぐ私を捉えていた。

「私が働いていた時とそれ程変わらない」

「…でしょ?
それなのにどうして妬まれたりするんだろうね。
実態を知らなくて医師=金持ち、何でも自由に買えるとでも思っているんだろうね。
いい迷惑だよ」

透の吐いた溜め息は深かった。
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