ばくだん凛ちゃん
この頃、紺野総合の小児科は多忙を極めていた。
当直出来る人間が少なくなった。

というのも。
黒谷先生のおめでたがわかり、当直免除。
速人と同じ年齢の医師が病気で2ヶ月休む。
新生児担当の太田先生は基本、この当直はしない。
…残された僕、速人、あと2人。

4日に1回、当直。
今までは基本6日に1回。
ただ、各自出張などの絡みで実際はこれよりスパンが短い。
もちろん、それとは別に呼び出しがある。
速人は僕に頼らなくてもいけるけどあとの2人がまだまだ経験が足らない。
僕はこの2人が入っているとほぼ呼び出されるから家にはほとんどいない。

もっと貪欲になってくれよ。
僕に指示を仰ぐのは電話だけにしてくれ。
そう思うけれど、2人ともそうじゃない。
僕がそれくらいの時にはあらゆる症例を見ていたよ、って言いたいけれど。
そもそも、そんな事を言える立場でもない。
まだまだ僕も色々と経験しないといけないから。



「先生、大丈夫ですか?」

休憩室で休んでいると黒谷先生がグッタリしている僕に声を掛けてきた。

「うん、死なない程度にはね」

冗談で言ったのに黒谷先生は真剣に受け止めて

「軽率ですみません」

と頭を下げられた。

「…でももう入籍も済ませてるんでしょ?
謝る必要なんかないよ」

入籍は元々決めていた4月にしているし。
ただ秋に式、披露宴を予定していたが、それがなくなった。

昨年、ハルの体調絶不調の中の披露宴を目の当たりにしているのでさすがの黒谷先生も自信がなくなったらしい。
式は先日、神社で身内だけで挙げたと聞いた。
何も謝る必要なんてないし、僕の時は本当に滅茶苦茶だったから余計に心苦しい。

「黒谷先生はね、とにかく自分の体調をしっかりと管理してね。
僕からはそれだけ」

万が一、出勤出来なくなったとかそういう事になれば本当に痛い。

あと1ヶ月すれば黒谷先生の代わりを雇い入れするし、どうにかそれまでは持ちこたえて欲しい…。

でも、僕の体もいつまで耐えられるのかな。
頭ではわかっているのに、体が異常に重く感じる事が増えた。

僕の今後の在り方もそろそろ真剣に考えないといけない時期に来たのかもしれない。
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