ばくだん凛ちゃん
家に着くと本来なら凛は寝ている時間。

「僕が凛をお風呂に入れるね」

何事もなかったかのように僕はハルに接した。
ハルも頷いてそのままキッチンに入る。
仕事をしているとどうしても親のペースに合わせることになる。
可哀想な事をしてしまったかな。
ハルはまだ手伝い程度だけど、両親ともにフルタイムで働いている家庭はどこか後ろめたい気持ちになりながら子育てしているのだろうなと思う。



「凛、どうしたらいいと思う?」

お風呂に入りながら僕は独り言のように凛に呟く。
凛は気持ちよさそうに体を洗われていた。

「お母さんにちゃんと気持ち、伝えたほうがいいよね。
僕もお母さんの気持ちをちゃんと受け止めないとね」

凛はニコニコしながら湯船の水面をバシャっと叩いた。
そのしぶきが僕に掛かり、思わず目を閉じる。

「いたずら好きだね、凛」

目を開けると凛は嬉しそうに何度も水面を叩いていた。



お風呂から上がった凛は授乳後、気持ち良さそうにタオルケットの上で眠る。

僕とハルも遅い夕食を終えて、無言のままリビングでぼんやりとしている。

「ハル、そろそろ寝よっか」

口を開いたのは僕。

凛を起こさないようにそっと抱き、寝室まで運んだ。

今日は疲れているのか、ベビーベッドに入れても起きる事もなく、凛は気持ち良さそうに寝ている。

そんな姿を見ていると自然と微笑む自分がいる。



振り返るとハルが浮かない顔をしてベッドに腰を掛けていた。

「…そんなに嫌だった?」

車の中では聞けなかった事を改めて聞いてみようと僕はハルの隣に座った。

ハルは黙って僕の顔を見つめる。

やり場のない怒りや不満がそこに浮かんでいる。

「嫌なら拒否してもいいんだよ、僕の事」

ハルの目が一瞬、大きく開いた。

「…僕は結婚するのが遅くて、子供も中々出来るかどうかわからない年齢にお互いきているからもし産むなら早い方が良いと思っている。
でもこれは僕の一方的な想い。
ハルが嫌ならそれはそれで良いと思っている」

今のハルは産後鬱なのかよくわからないけれど精神的に不安定なのは間違いない。

それ以前にハルの心が僕から離れていっているなら尚更、考えないといけない。



ハルの口が微かに動いた。
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