結婚ラプソディ
1.結婚式ちょい前

★ 高石 透 ★

7月下旬。

僕は1週間の夏期休暇をここに入れた。

僕とハルの結婚式の為に。

この暑い時期に結婚式とは傍迷惑なのはわかっている。

けれど…秋では遅い。

ハルのお腹が大きくなりすぎる気がしたからだ。



「ご迷惑をお掛け致します」

夏期休暇+有給休暇を入れ、更に普通の休日と合わせて10日休む。

「いえいえ、その分、盆は頼みますよ。
何せ開業医が一斉に休みますからね。
休日診療所とここと市立病院は大忙しですから」

同じ小児科の太田先生が微笑む。

「ありがとうございます」

僕は頭を下げた。

「披露宴、楽しみにしています」

黒谷先生が嬉しそうに言ってくれる。

医局では小児科の先生方が珍しく揃っていた。

「まあ…ご期待に沿えるかどうかは微妙ですけれど」

周りはクスクスと笑っていた。



休暇前の最後の勤務を終わらせ、挨拶も済ませ、僕は病院を出る。
こんなに仕事を休むのは今までなかった。
せいぜい夏期・冬期の4日が限界だった。

しかも呼び出しもない。

初めての感覚かもしれない。



「ただいま」

家に帰るとゆったりとした白いワンピースを着たハルがニッコリと笑って

「おかえり」

と言ってくれる。

思わず抱きしめた。
僕を乱す、ハルの存在。
唇にそっと僕の唇を重ねる。
…お腹が少しだけ、僕達の距離を邪魔をするようになっていた。

「ご飯、食べる?」

「うん、ありがとう」

そうお礼を述べてハルの額にキスをした。
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