結婚ラプソディ
その瞬間、私の体を抱きしめたのは透。

「そんな事、考えなくて良い」

そう言って私の背中をポンポン、と軽く叩いた。

「僕はそういう振舞いとかをハルに求めていない。
ハルはハルらしく、普通にしていたらそれで十分。
万が一、これはいけないと思う事があれば僕が全力でフォローするよ」

…透らしい言い方ね。
そう言われたら私は何も言えない。

透の体温が私の体にじわりと伝わってきて、段々落ち着いてくる。

「大丈夫、ハルちゃんには透の他にも僕達がいるから。
何かあれば助けるよ。
『家族』になったんだしね」

…お兄さん。
私、本当に泣きそうなんですけど。

「まあ…明日さえ乗り切ったら後はどうにでもなるさ。
深く考える事はないよ」

お義父さんは苦笑いをして続けた。

「明日は…親戚はそんなに激しくないだろうけど、病院関係者、何やら企んでいるな」

「父さんもそう思う!?」

お兄さんがお腹を抱えて笑う。

「…嫌な予感がする」

透は私を抱きしめたまま、半開きの目でお義父さんとお兄さんを見つめていた。

「いやいや、明日は余興、楽しんでくれ、透」

「兄さん、何するか知ってるの?」

「何となく」

「教えて」

「嫌」



透の腕の中で聞いた家族の会話は。
私が透から聞いていた家族の感じとは遠くかけ離れた、愛にあふれた家族だった。
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