結婚ラプソディ
「全く…二人の晴れ舞台に水を差すつもりですか」

なっちゃんの背後に回って馬鹿母子に言った。
驚いたなっちゃんは後ろを振り返る。

「至、独身女性で高学歴な方がいたら声を掛けるわよ」

失礼な話だ。

「学歴だけで人を見るのですか?」

母親に釘を刺してやる。

「大体、初対面でいきなりそれはないでしょう。
失礼極まりないし、透に知られたら逆鱗に触れますよ」

僕はなっちゃんを自分の後ろに移動させる。

「それになっちゃんには素敵な男性がもうすでにいらっしゃいます。
それを確認せずにペラペラと。妄想甚だしい」

それだけを言うと僕は後ろを振り返り、なっちゃんの手を引いた。
振り袖姿のなっちゃんは目を丸くしていた。

人がいっぱいの式場から出て、僕はようやく深呼吸をした。

「ごめんね、あんなのが親戚で」

頭を下げるとなっちゃんは首を振って

「それより至お兄さん。
先生と私の事、お兄ちゃんやお姉ちゃんから聞いたのですか?」

おお、それを心配していたのか。

「いいえ。
先日、大学にお伺いしたときにわかりました。
なっちゃんがお付き合いしている事は透からもハルちゃんからも聞いておりません」

そう言うとなっちゃんは微笑み、

「そうですか」

と胸を撫で下ろしていた。



本当に空気を読まない馬鹿な人たちが親戚でごめんなさい。
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