結婚ラプソディ

★ 高石 透 ★

ハルの調子が良くない。
…良くない、という言い方が良くない。

悪い。

とにかく調子が悪い。

お色直しで吐き気が止まらなかった。
ファーストバイトはもう止めようと言ったけど、それはハルが嫌だと言った。
だから本当に気持ち程度にしかフォークに乗せなかった。

「ハル…本当に大丈夫?」

これから余興に入るけど…長くなるかな。
隣に座るハルの手を握り続ける。

「うん、ありがとう」

そう言って僕の手を握り返した。

余興のトップは哲人。
友人代表でスピーチをしてくれる。
まあ、准教授だし話すのは問題ないと思う。
その次にハルの上司だった神立さんがスピーチ。
スピーチの最後は日下教授。
その後、小児科チームが何やらムービーを作ってくれたらしい。
それで終わりだから余興は30分程度で終わるはず。

…それでも30分掛かるんだ。

その後にハルは天国のお義母さんに手紙を読む。
手紙なんていらないんじゃないかって言ったけど、いるらしい。
その手紙はお義母さんだけに宛てたものじゃないらしい。

それが心配だよ。
倒れたら本当にどうしよう。

まあ、それを越えたらあと少しで終わる。



「只今ご紹介に預かりました私、K大医学部准教授の水間 哲人と申します。
本日は透君、ハルさん、御両家の皆様、おめでとうございます」

哲人の言葉は明快だ。
昔から何一つ変わらない。

「透君とは…」

と言って、哲人は顔をしかめた。

「言いづらいので普段、呼んでいる【君】なしで呼ばせて頂きます」

哲人は僕を見て、微笑んだ。

「透とはK大医学部の同期で入学した日に会話をして仲良くなり、その関係は今日まで続いております」

…嫌な予感。

「まあ、先程のプロフィールビデオにありましたように酒豪の透には何度も泣かされました」

隣のハルがしかめっ面で僕を見る。

「誤解するな、ハル」

とハルの耳元で囁く。
みんなが弱すぎるだけだ。

「毎日、勉強も沢山していましたけど、透も私もバイトで同じ塾の講師をしたりするくらい、仲が良かったです。
3年後輩には現在、紺野総合病院小児科医の神宮寺もいました。
3人で夜通し飲む事も多々あり、一番強いのは透でした」

強調しすぎだ、哲人。
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