結婚ラプソディ

☆ 高石 ハル ☆

下から透が本のページを捲る音が聞こえる。



思わず言ってしまった、あんな言葉。
胸がチクチク痛い。
私の為なら何でもしかねない。
そんな事が罷り通ったら駄目。

ああ…。
あんな風に言うつもりはなかったのにな。



段々体が熱くなってきてタオルケットを端に避けた。
お腹にそっと手を当てる。
最近は胎動がよくわかるようになってきた。
今、何やら動いている。
今は18週。
式の時には19週。

だいぶ目立つようになってきたお腹。

お腹を擦りながらこっそり下を見ると、透が凄いスピードで本を読んでいた。



突然、上を見上げる透。
バッチリ、目が合った。

10秒くらい見つめ合い、私は負けた…。
後ろにズリズリ、と下がる。



…再び透のページを捲る音。

何も言ってくれない。
怒ったのかなあ?

また上から覗いたら私、怪しいし…。
布団の上にごろっと横になった。



気が付けば、もう外は薄明かるい。

お腹まで掛けていなかったはずのタオルケットが掛けられてあった。

下を見ると、透がソファーで横になっていた。



悪い事、しちゃったな…。



私はロフトから降りた。
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