結婚ラプソディ
「…やっぱり」

ハルさんが真っ直ぐ透を見つめた。

「やっぱり透、狙ってたのね!」

場内、今日一番の爆笑だ。

ハルさんは恥ずかしそうに透を両手で叩こうとすると透はその両手を逆に握りしめた。

「狙ったらダメだった?」

透が少し顔を傾げて言うのでハルさんは顔を赤くして抗議の視線を投げる。

透の、あの甘い声とあの表情。

絶対にハルさんの弱い部分だ!

何気に攻めてるな、透。

「あ、そのままチューして!!」

速人がまた煽る。

「はあ?」

透がハルさんの手を放した。

「だって先輩!
披露宴ではなかったじゃないですか〜!」

速人、お前30代半ばなのに駄々っ子か?

「見たいー!」

紺野総合の医師達も囃し立てた。

「嫌だ、これ以上は嫌だ!」

透の言い分ももっともである。

その瞬間、ハルさんが透の背中に腕を回した。

そして透の唇に軽くキスをする。

余りにも自然で一瞬の流れだったので

「「あー!もう一回!!」」

速人と柏原さんの声が合わさった。

「ダメ」

そう言ったハルさんは透の背中に腕を回したまま、恥ずかしそうに透の胸に顔を埋めた。

透もしばらく呆然としていたがやがて我に返り、ハルさんを抱きしめる。



「じゃあ、質問はこの辺りでお開きにしましょう。
時間も迫っている事ですしね」

俺の言葉の後には大きな拍手が起こる。

透もハルさんも、こんな余興に付き合ってくれてありがとう。

…やっぱりこの二人はどちらか片方が欠けてもいけない。

お互い足りない部分をお互いが補っているんだな、と思った。



俺もナツとこんな風になれたらなあ…。

まだ先の話だけど。
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