結婚ラプソディ
「お姉ちゃんの結婚相手がお兄ちゃんで良かった」

ナツはホッとした様子で紅茶を飲む。

「もう二度と会えないと思っていたし…」



ナツは透に憧れて、あの大学へ入学した。

高校に入学してすぐにナツは

「お兄ちゃん、どこの大学へ行ったの?」

と聞いてきた。

一応は答えたけど、医者になっているかどうかまではわからなかった。

それでもナツは透と同じ大学に行きたい一心で勉強し、一浪を経て透と同じ大学に入学した。

入学したのは良いけれど、透が在学していたのは遠い昔。

透自身は大学近くの病院にいた事はいたが、入れ違いの形でこちらに帰ってきていた。

もしあのまま透が向こうに残っていたら会っていたかもしれない。



「お姉ちゃんはお兄ちゃんと会った時。
どう思った?」

突然、聞かれたから思わず紅茶を噴きそうになった。

「…熱が高過ぎてあまり覚えていない」

本当に覚えていない。

ただ、胸の辺りに激痛が走ったくらい。

後から聞いたら刺激を与えて意識があるかどうかの確認をしていたらしい。

「入院している最中は?」

「最初は何だか変な感覚だった。
透が無事に医師として働いている事は嬉しかったし。
…ただ、年齢も年齢だから結婚しているのかな、とか気にはなったけど」

「そうなんだ!
お兄ちゃんには聞かなかったの?」

ナツは無邪気に聞いてくる。

「聞けるわけ、ないでしょ。
聞いてどうするのよ。
結婚してるとか言われたらやっぱり複雑」

「それって別れたの、何年も前なのに気にしてたって事よね?」

ナツ、ツッコミ激しい…。

「…まあ、でもお兄さんが回診の時に教えてくれたから」

「なーんだ…」

ナツは残念そうに苦笑いをした。

「…でも。
透と一緒にいる事に不安は沢山あったけど。
何となく、結婚するなって、どこかで思っていた。
…ただ、本当に透のお母さんには心に傷を付けられたから、葛藤が凄かったな」

今ではもうすっかり大丈夫だけど。

透ともう一度付き合うのは良いけれど、後々の事を考えたらどうしても前に向けない自分がいた。

「…この子が後押ししてくれたのよね」

私はお腹に手を当てた。

きっと、子供が出来なければ付き合った所でまた別れていただろうなって。
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