結婚ラプソディ
気が付けば時計は午前10時を回っていた。
そして一緒に寝ていたはずの透がいない。

また、呼び出し…?
え、でも今日から10日はそういう事もないはず。

不安になって私はロフトから降りた。

やっぱりいない。

…どうしていないの?
急に自分の心にどんよりとした雲が広がった気がする。

胸がチクチク痛い。
変な胸騒ぎもする。



「…透、どこ?」

思わず、呟いてしまった。

返事がない。

私は力なくソファーに座り込んだ。

どこに行ったのかなあ…。



突然、ベランダの窓ガラスが開いた。
カーテンが風に揺れる。

「ハル、起きたんだ」

透が洗濯物を入れるカゴを持って、部屋に入ってくる。

チラッと見えたベランダに干された洗濯物が風に揺れていた。

「病院にでも行ったのかと思った」

途中から涙声になる。
泣くつもりなんかないのに。

「ハル…」

透は心配そうに私を見つめる。
カゴを置いて、私を抱きしめた。

「ごめんね、不安にさせて」

私は首を横に振った。
勝手にいなくなった、と思い込んだ私が悪い。

「病院にでも行ったのかって思ったんでしょ?」

透、私の心を透視しているの?

「行かないよ、この10日は」

そう言って私の額にキスをした。
優しいキスがそのまま唇にも舞い降りた。

「そんな風に僕を想ってくれてありがとう。
…ハルの切ない気持ちが痛いほど僕にも伝わってくる」

耳元で囁かれた言葉。
それを堪らなく愛しいと思う。
好きで好きで堪らない。
お互いが相手を想う気持ちを二人が持ち続けているからこそ、なんだろうけど。

「そんなに想ってくれたら…、また僕は制御不能になるよ」

少し笑みを含んだ声が聞こえる。

「…さっきの続き、またしたいなあ」

ちょっと!
耳元で切なく囁かないでー!

「…イヤ。
今日は透とデートするの。
あちこち行きたいからイヤ」

透のスイッチが入ると一日中、イチャイチャするだけで終わりそうな気がするのでちょっと拒否。

「今日は一日、まだまだ長いよ。
僕はハルと愛を確認してから、出掛けたいなあ」

そんな風に言わないで!
拒否出来なくなる、透に言われると…。

透が愛しそうに私のお腹を撫でる。



ああ…。

出掛けるの、昼以降になりそう…。
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