結婚ラプソディ

★ 日下教授 ★

「うーん…」

研究室でスマホを見つめながら悩む学生が一人。

「どうしましたか」

私は彼女に声を掛ける。

「あ、先生」

ショートカットの髪の毛が少し揺れる。

「兄から飛行機代が振り込まれていたのですが、いつから行こうかな、と」

「高石は何と…?」

高石の名前を出すと嬉しそうに微笑む彼女の名前は淡路 ナツ。

医学部5年生。

明日から夏休みに入るのだが、どうせ帰るのなら明日から帰れば良いのに。

「姉夫婦はいつでもおいでって」

嬉しそうに笑ってますねぇ、淡路さん。
お姉さん夫妻が大好きなんですね。

「うーん、でも…。
あ、先生はいつ、行かれます?」

「私は病院もあるので土曜日夜に飛行機で」

「…やっぱりそうですよね」

何でそんなに残念そうにするんですかね。







「…水間は金曜から有給休暇だったはずだなあ」

ウチの研修室の准教授、水間 哲人の名前を出すと、口元が緩んでいる。

…怪しいな。

「水間は高石を愛してやまないから、木曜の夜から行けるなら行くんじゃないかなあ…」

「木曜…」

淡路さん、スマホ見ながら声も出ています。

今のは心の呟きでしょ。



付き合っているんだろうな…。

歳の差、何歳なのよ。
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