結婚ラプソディ

★ 高石 透 ★

「はい、お誕生日おめでとう」

「ありがとうございます!」

なっちゃんは嬉しそうに包みを受け取ってくれた。

1日前だけど明日は僕、当直だし今日しかお祝いが出来ない。

明日はウチの病院になっちゃんが見学に来る。
案内は何と父さんがする事になっていて、見学が終わればなっちゃんは哲人が待つ、あの街へ帰っていく。



ハルから連絡が来て買いに行ったのは…。

「うわあ!
バリバリ高級感が漂っているんですけど」

表紙が本皮の日記帳。

「きっといざ、という時に付けていたら役に立つよ」

そう言って僕は自分が付けている日記帳を渡した。

「え、見ていい?」

興奮気味になっちゃんが言うので僕は苦笑いをしながら頷いた。

「うわ、スゴッ!!」

「まあ、今は電子カルテで管理されているし、個人情報の部分もあるからどうかとは思うけれど。
何となく、次の治療に繋がる事になるかなあ、と思って」

本当に大雑把にしか書いていないけれど、この病気にはこの投薬とかそんな感じの事を書いてある。

「あ!!」

なっちゃんが叫んだ。

「お姉ちゃんの事が書いてある!!」

「えっ、そうなの?」

ハルが覗こうとするから

「ダメダメ!!ハルは僕は死んでから見て、恥ずかしいから」

その瞬間、ハルの表情が曇り、

「透が先に死ぬの?
誕生日から言うと私の方が先でしょ?」

「同い年だから誕生日なんて関係ないよ!!
僕は絶対に過労で先に死ぬ」

「縁起でもない事言わないでー!!」

ハルは僕の頬をギュッ、とつねった。

「ごめんなさい」

「素直でよろしい」

ハルが手を放してくれた。

それを見ていたなっちゃんがニヤニヤしながら日記に目を落とした。

「参考にします。ありがとうございます」

そう言って僕に日記を返した。
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