大人の初恋
「あの。私、何か作ろうかと。良かったらキッチンを貸して貰えますか?」
 言いながら、ローテーブルに置いた紙袋を指差した。

「いや、折角だけど。腹は空いてないから。それに、キッチンはあまり使ったことがなくてね」
「そ、そうですか」

 気まずい沈黙が流れる。

「えっとね、メールもしたんですけど。
こないだのコト謝りたくって」

「ああゴメン。昨日今日は電源を切っててね。
 気にしなくていいよ、僕も君に厳しくし過ぎたようだ……サツキ?」


 空々しい会話に、私はついに我慢が出来なくなった。


「……ウソつき」
「何が」

 狼狽える彼の傍らに、私はサッと移動した。

「成瀬サン、私にウソばっかり吐いてた」
「一体何のコトを」

 私は、上目使いに彼を睨んだ。




「離婚しただなんてウソ。
 写真を見たわ………………

 貴方の奥さん、もう死んでるんじゃない!」
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