食わずぎらいがなおったら。



そのまま逃げるように休憩室を出ようとして、開けっ放しのドアのところで肩がぶつかった。



平内。なんでいるのよ。



そうだ、誰が聞いてるかわからない場所でまたバカなこと言ったんだ。






とりあえず戻りたくなくて、外階段に出る。外壁に寄りかかって泣くのを堪えた。

今日も情緒不安定だ。

自分にうんざりした。言い過ぎたとか、そんな言い訳ができない。

ちょっと幸せになったからって。

田代さんに、そんなことを言うなんて。




田代さんは、新婚で1度死産を経験している。

仕事の目処がつかなくて、フォローができなくて、奥さんとうまくいかなくなったと噂で聞いてた。

それで残業の少ない管理部に異動を願い出たらしい。



もう営業に移っていた私は、ただ、田代さんが田代さんらしくいてくれることを祈ってた。

大好きだった冷静で優しいあの人のままで。

大切にしてるのが、私じゃなくても。それでも。笑っていて欲しかった。いつもみたいに、余裕の態度で。





それなのに。やっとまた子供ができた田代さんに、そんな大事な時に開発に戻ってきてくれた田代さんに、『ちょっと幸せになったからって』なんて八つ当たりをするなんて。

どれだけ卑屈になってるの、私。




最低だ。
< 28 / 85 >

この作品をシェア

pagetop