食わずぎらいがなおったら。
田代さんが行ってしまうと、平内さんが来てくれた。

「真奈ちゃん、帰れって言われた?」

「でも」

「俺も帰るから」

半田さんと少し話してから私を促し、一緒に帰ることになった。

なんか食っていこうか、と駅裏のお店に連れて行ってくれた。香さんと前に来たことあるダイニングバーだ。

こんな時にいいのかなと思ったけど、半田さんも真奈ちゃんが責任感じなくていいって言ってるよ、と先回りして言われた。

そうか、半田さんに頼まれてるのかも。




2人でご飯なんて初めてですごい緊張したのに、平内さんは聞き上手で、とにかくしゃべっちゃって。こんな機会でもないと無理だから。



香さんのことを話した。

忙しい時期に私が入ってかえってやりにくかったはずなのに、色々教えてくれたとか。香さんは丁寧でミスがないことで有名なのにとか。

「こんな失敗も、全部私のせいなんです」

「気にするのもわかるけど。香さんがチェックしてるはずのところだよ」

好きだからってなんでも許すわけじゃないんだなぁ。大人だなぁとまた思った。



「私が香さんを避けてて、それでこんなことに」

「それ言ったら俺もそうだし。巻き込んでごめんな、真奈ちゃん」

そんな風に言われると思ってなくて、ついぽろっと聞いてしまう。

「平内さんは、香さんを好きですよね」

「そう見える?」

イエスともノーとも言わない答え方。

でも、絶対答えはイエス。


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