せめて、もう一度だけ
でも。


この、中途半端な関係を続けなくてはならないのも、不倫してるからで。


諒と離婚するためのエネルギーも知識も、私にはまだない。


大好きな遼くんと、何度も何度も体を重ねてひとつになっても。


法律的には、家族になれない。


遼くんにも、あまり突っこんだ話はできなくて、もどかしい。



最初から、わかってた。


踏み入れてはいけない底なし沼に、はまってしまうようなものだって。


そのうち動けなくなって、どうにもならなくなって、もがいてあがいて大騒ぎになって、全部を失うかもしれない。



だけど、きっと遼くんは、もっとツライ想いをしてる。


そういう、お互いの言いづらい気持ちに蓋をして、また体を重ねるんだろう。




「美希子」


「あっごめん、なに?」


「何度呼んでも返事しないけど、具合悪い?」


「ボーッとしてて、ごめん」


「昼飯、どっか食べに行くか」


「麺類でよければ作るけど」


「ちょっと、仕事で使いたい本を買いたいから、駅前のショッピングモール行くついで」


「わかった、仕度するね」


断る理由は、みつからない。










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