せめて、もう一度だけ
車で、少し離れたターミナル駅のショッピングモールに向かった。


同じように、助手席に座っているだけなのに。


諒とは会話もなくて、私は流れる風景ばかり見ている。


遼くんと一緒なら、途切れることのない会話で盛り上がって、涙を流すほど笑っていられるのに。



駐車場で車をおりた私たちは、手をつなぐこともなく黙って歩く。


目的の本屋へ歩いていくと、諒は何も言わずに専門誌のコーナーへ進んだ。


諒の背中を見ていたら、『おまえにはわかるわけないんだから、ついてこなくていい』って言っているようだった。


たぶん理解できないけど、それでも説明もされないっていうのは、ふたりの間に高い壁があるみたいだった。




本屋を出て、どこでランチを食べようかと案内板の前で話していた時。


ふと視線を感じて、通路の方を見た。


台車を止めてこちらを見ている遼くんがいた。


集荷の途中なんだろう、台車には伝票が貼られた段ボールが数箱積まれている。


声をかけたくても、かけられない。


隣には、諒がいるから。



タイミング悪く、諒が私に話しかけてきた。


「なぁ、ピザとラーメン、どっちがいい?」


「えっ、あー、どっちでもいいけど」


「なんだよそれ、いつもはハッキリ希望言うのに」


諒は私に笑顔で話している。



やめて。


笑わないで。


遼くんを見ると、諒のことをジッと見つめてから、悲しそうに顔をそむけた。


「じゃあ、ラーメンな」


先に歩く諒に、ついていくしかない私。


一度振り返ったら、遼くんはもう背中を向けて歩いていた。



遼くん、ごめんなさい。


味のわからないラーメンを食べて、家に帰った。




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