せめて、もう一度だけ
「美希子、それ本気で言ってんの?


見えないくらい小さくたって、ひとつの命なんだぞ。


中絶するってことは、親の身勝手で命を絶つってことだろ。


そんなこと、絶対しちゃダメだ」


「諒に説得されなくたって、ダメなことだってわかってるよ。


でも私は、彼と一緒にいたい。


どんなに反対されたって、彼が好きなの」


「そいつを好きなのは、わかってるよ。


でも、美希子はもう、母親になろうとしてるんだから。


赤ちゃんを最優先に考えれば、中絶とかそいつを選ぶっていう選択肢はないだろ」



わかってる。


痛みで胸が苦しいくらいに。


遼くんは、どこまで知ってるんだろう。


私がこうして悩んでいる間も、赤ちゃんはお腹の中で育っている。


遼くんに、会いたい。


会って、私の口から、本当のことを伝えたい。







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