ビター・アンド・スイート
「こんな事言って、ごめんなさい。
私ね、離婚した時、こんな事になったのは、子どもが出来なかったせいかもって。
どうして、自分でわからなかったんだろうって。
子どもが出来ないオンナには誰から見てもわかるように印が付いてれば、
自分でもわかるように印がついてれば、良かったのにって。
彼は、私に近づかなかったのかもってそう、思った。
そうすれば、こんなに苦しくならずに済んだのにって。」とうつむいたまで言うと、
「俺にも、印がついてるかも。
子ども出来た事ねーし。
それに、子どもは授かりものでしょ。
どんな、夫婦にも起こり得る事だって思う。
仮に、
結婚前に検査して、子どもが出来ないってわかったとしても、
俺はハヅキと一緒にいたい。
だからさ、俺と一緒にいたいかっていう事だけ、今は考えて。」と私にほほえみかけた。
「うん。」と泣き笑いの顔を見せると、
「そんな顔見ちゃうと、このまま連れて帰りたいって思うけど、
明日6代目と会う約束してるしなあ。
まだ、付き合ってないっておまえはハッキリ言っちゃってるし、
今すぐハヅキを襲っちゃう訳にもいかないよなあ。
おまえさ、そーいう事わかってて、俺にそんな顔をみせてるのか?」とギュっと抱きしめる。
「そんな事ができたら、もう少し、上手く生きられてるかも。」とくすんと笑うと、
「しょーがねーな。」とそっと唇を合わせるだけのキスをして、私の身体を離した。

「明日、仕事?」と聞くので、
「そうですよ。」と言うと、
「夕飯、一緒に食う?」と私の顔を覗く。
「明日は工藤さんとお食事です。」と言うと、
「ムカつく。」と首筋に唇を付けた。
「吸血鬼。」と言ってやったら、
「変態よりいいかな。」とくすんと笑って、
「ちゃんと、お付き合いは断って来い。」と私の顔を見るので、
「そんな事はまだ、言われていません。」と怒った顔を見せると、
「ばーか。帰りに電話しろ。迎えに行くから。」と手を振って、立ち去った。
「1人で帰れます。」と、背中に言ったけど、シロタさんは振り返らず、また、手を上げた。



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