ビター・アンド・スイート
数日後、
「ハヅキ来なさい。」
と夕飯の後の片付けをしていた私を母が呼びに来た。
うわー。久々の呼び出しだ。
ヤヨイが面白そうに私の顔を見る。
リビングに父とおじいちゃんが座っている。
やれやれ。


「シロタ君と一緒に暮らしたいのか。」とおじいちゃんが口を切る。
「お付き合いを始めたばかりですが、あまり会う時間がないのは事実です。
シロタさんが一緒に暮らそうと言ってくれていますが、
そこまでしなくても。と言う思いもあります。」と正直に言う。
「シロタ君と再婚したいのか?」と聞くので、
「このお付き合いの先に再婚があればいいと思っています。」と言うと、父が
「ハヅキ、あの男はいつも忙しそうだな。
おまえが支店でハヅキと呼ばれていたので、苗字だと思っていたと、
しばらく、三吉屋の娘だとは思っていなかった。と
よく気がつく店員で、きれい好きで、姿勢がきれいだったので、
自分の店に誘うつもりだったとそう笑っていた。
見ているうちに、好きになって、
話すようになったら、ますます気に入ってしまったとそう言っていたよ。
山下町にできる新しい店が大きな計画になると
いくつか店舗を整理して、その店を本店に次ぐ
カフェも併設された店にするつもりだと言っていた。
ますます忙しくなるだろう。」
とちょっと息をついて、
「ハヅキ、シロタ君と一緒になる気なら、
gâteau kazamaを手伝いなさい。」と言った。
「?」
「きっと、シロタ君も三吉屋に遠慮をして、
口にしていないだけで、そう思っている。」と言った。
「結婚するって決まってないのに?」と言うと、
「ハヅキが決心するなら、いつでも籍を入れるって言ってたよ。」
とちょっと笑って、
「まあ、手始めに三吉屋の仕事は2、3日に1度くらいにして、
シロタ君のマンションから通いなさい。
毎日じゃなければそんなに無理なく鎌倉から、通えるだろう。
シロタ君との生活に自信がついたら、
籍を入れて、ケーキ屋を手伝うといい。」と言った。




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