空の下で
目が覚めると、まだ外は明るくなる前だった。


ふいにグラッとよろけて壁に手を置いた。


あの頃を思い出す。


あれは学生の時、体育なんて一度も受けたことがなかった。


ある日の体育の授業が終わるちょっと前、気分が悪くて保健室に向かった。


すると、誰もいなかったので、教室に戻ろうとしていた。


教室は3階、あの頃自分はエレベーターで昇り降りしていたのに、何も考えずに階段を登っていた。


「あ、華原さん階段登れるじゃん、結局仮病かよ」


あ、ヤバイ間違えたと思った。


それにチャイムなんて聞こえなかったよわたし。


目の前にいるのは、クラスのボスと言ってもいいぐらい怖い子。


「今日さ、疲れたんだよね、体育。いつもより大変だったの、あ、あんたにはわかんないか」


「……」


「ならさ、教室までおぶって?あ、お前には無理か」


すごく馬鹿にしたような言い方で、ホントに腹が立った。


「いいよ、おぶる」


彼女は私よりも身長が高い上、やせ細っていた当時の自分のとっては本当に負担がかかることだった。


「早くしろよ」


私は踊り場まで登って、彼女をおぶった。


「ほら早くしてよ、水飲みたいんだよ」


1段、また1段と足を進めていくうちに、息が苦しくなってきた。


「仮病はいいから早く登れよ」


そして、次第に吐き気も出てきて、完全にこれは不整脈だと分かった。


「はぁ、あてになんね、まじうぜぇ」


ダメもう吐きそ……


そのとき、彼女は2階から私を落とした。


階段に打ち付けられて、踊り場の壁に強打し、耐えきれずに戻してしまった。


「きっきったね、お前これぐらいトイレでしろよ」


ドクッ……


そのとき、発作がおきた。


ドクッドクッ……


どんどんどんどん押し付けられ、絞められていく。


「おい早く立てよ!仮病はいいから」


痛くて痛くて……もう無理だと思った。


キーンコーンカーンコーン


あっけなくチャイムが鳴った。


「知らね」


そう言って私を蹴って行った。


痛い……痛い……息苦しい……


目の前にある階段がぼやけてくる。


「柚姫!?」


そのとき、唯一分かってくれた友達がいた。
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