欲情プール
「大丈夫。地盤は充分に整えた」
その人は私に…
懐かしくて優しい眼差し向けて、今日までの事を説き明かす。
「本来、政略婚で手に入れる筈だったものは…
だいぶ時間は掛かったけど、自力で全て手に入れたし。
社長就任の時には、やっぱり常務一派に裏切られたけど…
株主達には好条件の契約を打ち出して、なんとか抑えて。
その契約を果たす為と、裏切りのダメージを埋める為。
更には婚約破棄を認めてもらう為に、親父から出された条件を全うするのに3年もかかったけど…
人間死ぬ思いを味わえば、何でも果たせるんだなって!」
「死ぬ思い…?
っ、そんな思いを、したんですか?」
心配になって、咄嗟に尋ねると。
「…したよ。
今、目の前にいる…
心から愛してる女を、傷付けて、離れて。
苦しくてっ、死んでしまいそうだった…!」
耳にした途端。
思わず「うっ…」と嗚咽が零れて、口を覆った。
ずっと封じ込めてた涙は、次々と激情に押し出されて…
すると。
お揃いの時計を付けたその人、慧剛の手が…
私のそれをキュッと掴んで。
その熱が、心にドクン!と命を灯す。
その人は私に…
懐かしくて優しい眼差し向けて、今日までの事を説き明かす。
「本来、政略婚で手に入れる筈だったものは…
だいぶ時間は掛かったけど、自力で全て手に入れたし。
社長就任の時には、やっぱり常務一派に裏切られたけど…
株主達には好条件の契約を打ち出して、なんとか抑えて。
その契約を果たす為と、裏切りのダメージを埋める為。
更には婚約破棄を認めてもらう為に、親父から出された条件を全うするのに3年もかかったけど…
人間死ぬ思いを味わえば、何でも果たせるんだなって!」
「死ぬ思い…?
っ、そんな思いを、したんですか?」
心配になって、咄嗟に尋ねると。
「…したよ。
今、目の前にいる…
心から愛してる女を、傷付けて、離れて。
苦しくてっ、死んでしまいそうだった…!」
耳にした途端。
思わず「うっ…」と嗚咽が零れて、口を覆った。
ずっと封じ込めてた涙は、次々と激情に押し出されて…
すると。
お揃いの時計を付けたその人、慧剛の手が…
私のそれをキュッと掴んで。
その熱が、心にドクン!と命を灯す。