欲情プール
「俺は…

お前より仕事の方が大事だ。
だから今まで仕事を第一優先して来たし…
大崎不動産の跡取りとして、結婚するなら会社の役に立つ女とする。

そんな事、賢いお前ならわかってると思ってた」

精一杯傷付ける言葉を選んだ俺に、バシンと手のひらが返される。


「っ、最低ねっ…

そうやって結婚も恋愛も自分の駒みたいに扱って…
女をなんだと思ってるのっ?

あなたなんか幸せになれないわっ…
一生会社に縛られてればいいっ」


そうだ、俺を恨んでくれ…
その方が早く忘れられる。

こんな最低な男の事なんか、早く忘れた方がいい。


切り刻まれる胸にそう言い聞かせて…

去って行く後ろ姿を見送った。



だけど俺に、傷付く資格はない。

不本意とはいえ華那を傷付けて…
自らの意思でこの道を選んだんだから。




自分のしがらみを恨んだ事もある。

でもこの家に生まれたからには受け入れざるを得ないし、親父にそう叩き込まれてた。

そしてその期待に応えようと、がむしゃらに頑張って来たし…
いつしかこの会社を大事に思うようになっていた。
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