欲情プール
そうして、堀内の奥さんとの効果的な接触方法を巡らせていたある日。


露美が確実に寝ている早朝を狙って、必要な物を取りに行こうとした俺は…

先に店舗に寄って、それがないかを確認した後エレベーターに向かうと。

突然その接触対象が現れて驚いた。


確か今日は最後の仕事で…
だからってこんな早くに出社するのか?

そう思いながらも早速挨拶の声を掛けると、ビクリと振り向いたその顔は涙目で。


あぁ、そういう事か…

恐らく堀内は昨夜別れ話を切り出して。
だから彼女は逃げるように、こんな早朝に家を出たんだろう。


にもかかわらず。
微かな笑顔で返事を返して、クールに通り過ぎていく彼女が…

弱みを見せずに無理してる姿が…


「…大丈夫ですか?」

痛々しくてほっとけなくなる。


当然、余計な介入に怪訝な顔を返されたけど…

「いえ、今日も頑張って下さい」

そう励まさずにはいられなかった。



よりによって退職《こんな》日に…

言ってみれば彼女も、俺と同じあの2人の被害者で。


だから何とかしてあげたい。

利用するのに若干気が引けたけど…
結果的には彼女の為にもなる訳で。


とにかくそれまで…
何より今日を、乗り切って欲しかった。
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