欲情プール
「あれ、その時計…
確かプレゼンの時にもしてましたよね?」

「よく覚えてるな」

「はい。すごく素敵だと思ったので」


今から社運をかけた大事な接待がある俺は、例の勝負時計をはめていた。

そして茉歩の励ましを胸に、名残惜しい気持ちで…
やって来たタクシーに乗り込もうとした矢先。


「ちょっと!ケーゴっ!!」

いきなり露美に怒鳴り込まれる。


「今、全っ部聞いたからっ!
彼に婚約の事バラして、別れるように仕向けたんでしょ!?」

あの男っ…
不安に耐えられなかったか…


マズい、こんな状況になるなんて…

これだけ茉歩といれば、こうなる事は予測出来てたはずなのにっ。


露美と堀内のやり取りを目撃した茉歩は、彼女が旦那の不倫相手だと認識してるはずで…

それが俺の婚約者だと知って、どう思ってるだろうか?


とにかく、まずは露美を何とかしないと。

婚約は内々だとあれほど念を押したのに、こんな場所で口外するなんて…


「そんな事で私達の仲を引き裂けると思ったら大間違いなんだからっ!」

「落ち着け、露美」

それを自分にも言い聞かす。
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