欲情プール
策略は仇となるのか…

離婚に向けて動き出した私達は、慰謝料等の折り合いが着いたらお互いの両親に話す事にして。


私は、今後の不安に押し潰されそうになりながら…

次の日の終業を迎えた。



「茉歩、メシに付き合ってくれ」

用もなく、専務から夕食のお誘い。


「…

仕事とプライベートは、きっちり分けてくれる筈じゃ…?」


「そのつもりだったけど、そんな塞ぎこんだ顔で仕事されたんじゃ敵わない。
気晴らしに、美味いもんでも食いに行こう」


塞ぎこんだ顔?

聡に離婚を突きつけられた翌日の、張り裂けそうな気持ちでも…
そんな心中、誰にも見破られなかったのに。


ー「人を見る目だけは長けてるんで」ー

この人ほんとに、洞察力が鋭いのかもしれない。



「すみません…
明日からは気を付けるので、」

誰かと食事に行く気分じゃなくて、やんわり断ろうとしたのに。


「なに食いたい?
あ、焼き肉とか元気出るんじゃないか?
焼き肉でいい?」

と、私の言葉を遮ってまで質問しといて。

そのくせ答えは聞かずに、すぐさま予約の電話を入れ始めた。


< 27 / 289 >

この作品をシェア

pagetop