欲情プール
「旦那さんと、何かあった?」


不意の問い掛けを受けて…
言葉を失くした。


雇用手続や今日までの会話で、それなりのプライベートを知られてるとはいえ…
何でそう思ったんだろう?

なんて不審に思ってすぐ、
涙目を見られてた事を思い出す。


あんな早朝に、家を出てすぐのエレベーターから、泣いた痕跡を残して現れたら…
一緒に暮らしてる相手と何かあったって、わかっちゃうよね。

今は世帯状況も知ってて、そのうえ洞察力の鋭い専務なら、尚更。


もしかして、それで…!
頭ポンポン?

今日の塞ぎ込んだ顔とか、今の強張ってた私を察知して…?


ふわっと、心が綻んだ。



実際ポンポンのおかげで、ショックが吹き飛んだのも事実だ。


ふと。
そう言えば、前にもこんな事が…

「味見」と、私のスプーンからセミフレッドを食べた専務が、頭に浮かぶ。


確かその時も、それで胸の痛みが消されてた。



ひょっとして専務は…
わざと子供っぽくしたり我儘ぶる事で、相手をさりげなくフォローしてたのかもしれない。


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