スノー アンド アプリコット

俺のような、初等部からの持ち上がり組が圧倒的な人数を占める嶺山学園では、高等部から編入してきたというだけでもよそ者の感が強い。
その中でも、杏奈は誰がどう見てもぶっちぎりに目立っていた。

編入組は肩の狭い思いをしながら、選民意識が強い初等部組のご機嫌を伺い、擦り寄っていくのがセオリーだ。
にもかかわらず、杏奈にはその意志が微塵も見られなかった。当時から、振る舞いも発言も傲岸不遜そのものだ。

杏奈のことをなんとかして見下げようと必死な女子生徒は多かった。が、それはどうしても難しかった。
まず、成績はいつもトップクラスだった。
エスカレーター式に進学できる初等部組と違い、相当な学力を要する受験をパスして高等部に入学した実力は伊達じゃなかった。

それから何しろ、尋常じゃなく可愛かった。

「はぁ? 何それ嫌味のつもり? 性格もブスなの? カワイソぉ。」

周りにも聞こえるような大きな声で放たれる、この一言で大抵の女は顔を真っ赤にして黙るしかなかった。

嫌味が通じないなら、集団でイジメを――
まあ、そんな流れになったのは、当然と言えば当然だった。地獄を見るのはどちらになるのか、考えが及びさえしなければ。

ある日、杏奈はトイレでバケツ一杯の水をぶっかけられた。びしょ濡れのまま猛然と個室を飛び出した杏奈は、廊下に逃げた数人のうちの一人を捕まえ、引き倒し、馬乗りになった。
それからレイプ犯よろしく、じたばた暴れるそいつを押さえつけながら制服を全部脱がせ、またトイレへ去ったのだ。

脱がされた女子生徒は、教員が駆けつけるまで哀れにも下着姿で泣きじゃくるしかなかった。

「何泣いてんの? これくらいの覚悟もなくイジメとかすんの? 顔だけじゃなく頭も残念なのね、カワイソぉ。」

奪い取った制服に着替えて涼しい顔をして戻ってきた杏奈は、そう言ってせせら笑った。騒ぎを聞きつけた見物人は、校舎が違うはずの俺を含む中等部の奴らも加わり、相当な人数に膨れ上がっていた。
そんな地獄絵図の中心で、杏奈は水が滴る自分の制服を、ブルブル震えながらしゃがみ込んでいる女子生徒(の、顔に!!)に投げつけて、トドメを刺したのだった。

「クリーニングに出しといてよね。あんたのせいなんだから。」
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