スノー アンド アプリコット
「何か勘違いしてるみたいだけど。」
あたしは冷めた声で言った。
バカ店員、さっさと水を運んできなさいよ。
「ユキは別にあたしのものじゃないし。あたしのまわりをうろちょろしてるから、使ってやってただけよ。」
「杏奈っ、」
「杏奈ちゃんは、いつもそうやって…」
嘘、泣くの? 勘弁してよ。あたしがいじめてるみたいじゃない。望むセリフを言ってやったっていうのに。
「自分は他の男の人と付き合いながら、ユキくんのことは手放さない。私はずっと、杏奈ちゃんが羨ましかった…」
「ねえ、悪いけどあたし、あんたの身の上話なんて興味ないのよ。あんたが泣くような問題は存在しない。ユキを好きなら、付き合ってって一言言えばいい。わかった?」
「そんなこと…そんなこと、とっくに、言ったわ! だけど雪臣くんはいつだって杏奈ちゃんのことばっかりよ。あれから何年経つと思ってるの? もういい加減、雪臣くんを開放してあげてよ。」
開放?
あたしはあまりに見当違いな発言に唖然とした。
あたしが、一体いつ、ユキを縛りつけたっていうのよ。
「清華、何度も言っただろ。俺が勝手に杏奈をずっと好きなだけなんだ。俺が勝手に追いかけて、勝手に隣に住んでるだけだ。」
「そうよ。こいつがあたしを好きなのはあたしのせいじゃないわよ。」
「てめえは! 好きだから俺を譲れないくらいのこと言えねえのかよ! 俺が何回てめえの修羅場で協力してやったと思ってんだよ!」
「冗談じゃないわよ、あたしを巻き込まないでよ!」
「そのセリフ、そっくりそのまま過去のお前に何回も返してやれるぞ!!」
清華を放ったらかして怒鳴り合ったら、清華は呆然としてあたしたちを見つめて、再びさめざめと泣き出した。
なんなのよ。あたしはその鬱陶しい光景に人差し指を突き出した。
「泣いてるわよ!」
「お前のせいだろ!」
「はあー?!」