興味があるなら恋をしよう−Ⅰ−
「確かに現実は、こうなっている。
藍原が俺の事を好きで、俺も藍原の事が好きだ。
だけど…、なんだ。好きなのに手探りなんだ」

…。

「それはな坂本。坂本が居るからだ。…解っているだろ?」

…藍原。何してるんだ…。

「藍原の中には坂本が居る。俺はそう思っている。間違っているだろうか?」

…フ。だとしてもだ、藍原は気づいてはいない。それが何かも。きっと突き詰めて考えはしないだろう。もう、課長に決めたんだから。

「俺に対して、藍原は、今は好きである事に忠実になろうとしているんじゃないかと思ってしまうんだ。まだそんな、好き、だと思う。思い方を変えてしまったのは俺のせいだ」

藍原の、昔の思い方は一旦途切れた。…坂本という男も現れた。近くに居る。
本人には聞けない。聞けばそうなのかと確信させてしまうかも知れない。

「それでも俺は好きだ。好きになった、と言った方がいいか。大事に思っている。こんな事を坂本に言う俺は、卑怯かな。…狡いのかな」

そんな風に問われても…。一層のこと、会わないでくれとか、実際会ってないけど、関わらないでくれと言われた方が…。

「…俺は…興味を持ちました。初めて会った時、藍原は何の抵抗もなく、俺の中にストンと入って来ました」

「…うん」

「ハプニングのような出会いです。実際あれは藍原にとって、最悪で…最大のハプニングでした。俺には藍原の姿が事実、衝撃的でした。でも、その印象だけではないモノが確かにありました。その中に一目惚れという表現が含まれていても、それが全てではない気がしました」

引き合うモノと言ったらいいのだろうか。俺にとって都合のいい解釈かも知れない。だけどそんなモノだ。

「…うん」

「俺は、…そうです。間違いなく、初めて会った時から藍原の事が好きです」

「うん。…解っている。はぁ。話はここ迄だな」

「え、はい?」

「時間もないし、元々会社で話す事ではない。それに。
藍原に興味を持っている奴に、これ以上、俺の手の内を明かすような話をしても、な」

「課長…」

ポンと肩を叩かれた。

「こんなタイミングでこっちに配属になるなんてな…。だけど、皮肉なものだ。坂本が来なければ事は動かなかった。さあ、もう時間だ。今日も頼むぞ。
あ、恥ずかしげもなく言うけど、俺は藍原を目茶苦茶溺愛しているから。そのつもりで」

はぁ…。坂本と藍原、運命が引き合った、なんて言い方はしないぞ。例えそういうモノが本当にあったとしてもだ。
しかし…俺はそんな坂本に勝てるのかな…。

「は、い」

溺愛ね、……課長…。
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