興味があるなら恋をしよう−Ⅰ−
課長、これ以上は暗黙の了解とでもいうのか。
…静かな宣戦布告。
俺という存在。それが僅かでも藍原の中にあっても…何もかも、全て引っくるめて、藍原が好きだという事か。
…フ。そんな強い思いなら、何も俺を牽制する事なんかないのに。
俺にとって藍原は女でも、藍原には俺は男として映らない。結局俺はそういう奴ですから。

こんな事を話したら、課長は安心したのだろうか。
そうでも無いんだろうな。…目の上のたんこぶ、とでも言ったところか。

部屋が隣で会社でも同じ課で。邪魔くさいよな、俺って存在は、きっと。
だけど、俺は連絡先は知らないんですよ?
…近いから。
物凄く近い位置に居るから。…だから難しくなった。


帰りにメモを書いた。

藍原の部屋の前。

システム手帳を取り出し、電話番号、アドレスを書き込んだ。
そして、少しの告白だ。

ミシン目を折り、切り離す。
気が付いてくれないかも知れない、…一生。
一生は大袈裟か…。
ドアポストに差し込んだ。
ポストが別にあると、案外ここは見ないもんだ。目にするのはいつになるのか。
紙の色が変わる迄には気がついてくれるかな…。

…あ!まずい。名前を書き忘れた。…はぁ。何してるんだよ、もう。
もう一枚、坂本尚紀と書き、念のため、番号、アドレスを書いた。
入れた。
よし、これで大丈夫だな。全く…。
一杯紙が入っていると、ポスティングされたチラシだと思われないかな…。
フッ、名前の無いアドレスと番号なんて。
連絡を期待して待つどころか、得たいの知れない変質者扱いされるところだった。
危ない危ない…。
< 139 / 166 >

この作品をシェア

pagetop