興味があるなら恋をしよう−Ⅰ−
★★★
コンコン。

開いたままの部屋のドアをノックした。
フフ、何だか会社に居るみたい。

「ん〜、…何だぁ?…」

「課長、珈琲を入れて来ました」

「…ああ、…有難う、悪いな。ここに…置いといてくれるか…」

書類から顔を上げず、返事だけが返って来た。
デスクの脇にソッと置いて後ろに下がった。

…。

……ん?

「…どうした?…藍原」

…。

課長の座るビジネスチェアに、後ろから腕を伸ばし緩く抱き着いた。
ん?…藍原?…ぁ。

「あー、ごめん。ごめん、もう少しで終わるからな」

腕にトントンと触れた。
そうだよな。同じ家の中に居るからといっても、これでは寂しいよな。はぁ、つい、仕事に集中してしまった。
早く退社したいが為に、資料を持ち帰っていた。仕事はしていたとしても、家でなら藍原と二人、何も気にせず居られると思っての事だったのに…。なんてことだ。

「…課長」

「ん」

解ってる。藍原の腕に触れながら、ペラペラと資料をめくり読み進めていた。もう終わる。…待ってくれよ、もうちょっとだ…終わるからな。

「…課長は私の事が…嫌い?」

ん?…んん?…何?……なに?!

「藍原…。そんな訳ない。何だ、どうした?」

慌てた。とんだ誤解だ。藍原の腕を解いて立ち上がり、向き合った。

「だって…」

もう、こうして課長の部屋にお泊りするようになってかなり経つ。でも、課長と私はずっと何もない。
いつも抱きしめてくれる。
それはそれで嬉しいし、キュンとするし、大切にされてる気持ちが凄く伝わってくる。
懐の大きさを感じる。
眠る時はいつも抱きしめられて眠っている。
でもそれ以上はない。何もない。
私…どこか駄目なのかな…。

「私、何か嫌な事とか、課長にしてしまって、それで嫌われしまったんですね。だから、…課長は何もしてくれないんですね…」

大胆な発言だと思った。

「藍原…、誤解だ。勝手に思い込むな?また思い違いをしているぞ?」

「でも、まだ何も…。課長は…」

あぁ…。手を出さない事、ずっと気にしてるんだな。

「藍原…それは、好きだからだよ」
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