興味があるなら恋をしよう−Ⅰ−
「伺いを立てるのも変ですし、全てを話すつもりもありませんが…」

「まあ、何かあった…そうだよな。何かなければ疑問形であれ何であれ、普通はそんな事、面と向かって言わないし、こっちだって、言われて承諾はしないよな…」

…。確かに。言うことでもない。それに、気持ちはバレてるんだし。

「だけど坂本の気持ちは確かに解った」

変わらず藍原の事は好きだという事だ。…はぁ、まあそうだよな。

…。

「返事は返しようがない。だけど、…坂本は坂本の納得のいくように、だな。すればいい」

でないと燻り続けるだろ?………決めるのは藍原だ。

「…はい」

「俺も今の状態で守りに入るつもりはない。有利だとも思っていない。攻めて守るつもりだから。坂本にそんなに猶予はないぞ?」

んん。確かに課長は盤石だ。こんな大きな思いで構えられる人、いつでも飛び込める場所がある、藍原にとっては安心だよな。

「はい。俺のおかれた環境も、どうやら猶予はないようなので」

ん?…どういう事だ?随分、具体的な気がするが…。やはり、何かあるんだな…。
何かが迫っているのか?猶予とは、タイムリミットでもあるというのか?
俺の知らないところで、二人で決めようとしている事があるのか…。それは何だ…。二人で決めることと言ったら…。
……考えても解らないモノは解らない。

「ところで…仕事はどうだ?」

藍原の話、済んだだろ。もう大友も退職した。

「え?はい。引き継ぎはきちんと出来たと思ってます」

「うん。…聞いてるぞ?あちこちの取引先、訪問する度、大変らしいな」

「え?いや、特に何も問題は…」

「違う違う、女子社員が、ってことさ。随分、人気があるみたいじゃないか。噂は自然と耳に入ってくるものだ」

飲み干して空になったコップを無意識に握り潰した。

「あー、いやいや、そんな事はないです。…仕事には関係ないですから。課長の噂の方が多いと思います。昔、来てくれていた、一条さんて方は、まだいらっしゃいますかって。
根強いファンが居ますよ?」

どんなに騒がれようと、藍原以外、眼中にない、そういうことだろ?

「フッ。そんなモノはな、坂本と話す為の切っ掛けに過ぎない。利用してるだけだよ、昔の営業マンの名を」

「そうでしょうか。そうは感じませんでしたが」

「そうだよ」

…。

「ふぅ。そろそろ行くか」

「あ、はい」
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