興味があるなら恋をしよう−Ⅰ−
あと、一駅。

…着いた。
改札を出た。

コンビニに寄った。手当たり次第カゴに入れた。
支払いを済ませた。はぁ、よし。
あと、一息。


「…藍原」

ドサッ。

「…あ〜あ、またこんなに買っちゃって。全部食べられるのか?明日まだ休みじゃないぞ?」

「坂本さん…」

どうして…。いつもこんな風に会うの…。

「はい。しっかり握ったか?今度落としたらシュークリームは爆発するぞ?
バーン!クリーム爆弾、てな。あ、は……完全にすべったな…」

…。

どうして居るの…。どうしてこんな時ばかり…会うのよ。

「おい、藍原…なんて顔だ。…酷い顔してる…。
用は済んだのか?もう帰るだけなのか?」

…。

「あー、…も゙ー!帰るぞ。いいか?」

あ。コンビニ袋を持つ手の方を握られた。

「こうしたら落とさないだろ?その顔…帰るまでもちそうか?」

グイッと引っ張られるように歩き出した。

「え、あ」

「…行き着く先は何処か知らないが、決めて…自分の脚でしっかり歩かなきゃ、いつまで経ってもどこにも辿り着けないぞ」

…え?何の、事?…。

「このお礼は、そうだな、どれかスイーツ一つでいいよ。爆弾になりかけのシュークリームを頂くかな」

…。

フ…フフ。…もう。……フフ。

「…どうしてこんな時に居るんですか…いつも」

「ん?こんな時って言われてもな、さぁなぁ。俺にも解らないよ。会ってしまったもんは仕方ないだろ。そういうことになってるんだから。俺からしたって、藍原が何で居るんだって事にもなるだろ?」

「…うん。…私にも解らない。でも…」

「ん?」

「こういうのって、やっぱり何かあるんでしょうか…」

私と…坂本さんて。

「何かって?」

「何かは何かです」

「そうだな~。何かはナニか?ってヤツだよな」

「ぇえ?あ、も゙う」

すぐふざける…。

「フ…何でもないよ。ほら、もうちょいで我が家だ」

「…私も我が家です!
…シュークリーム、食べに寄りますか?」

…。

「…いや。寄りはしない。貰って帰るよ」

…。

「解りました」


部屋のドアの前で止まった。袋に手を入れた。

「それでは、これ、お礼です。少し潰れているのは許してくださいね。ご存知の通り仕方ないですから」

「ああ。解ってるから貰うんだ」

「…え?」

「潰れたのなんか見たら、余計思い出すだろ?
じゃあな、サンキュ。ご馳走様」

あ、…坂本さん…。

「あ、あれだ。明日休みだったら、お邪魔して泊まるんだけどな、残念だな」

「あ、…もー、…坂本さん…」

「尚紀だろ?おやすみ、紬」

「…おやすみなさい」

家まで泣かずに済みました。こうして帰りつけました。なんだか少し笑えました。
有り難うございました。
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