興味があるなら恋をしよう−Ⅰ−
「藍原〜」

「はい」

「休憩、行こうか」

「はい」

こんな声掛けも、極普通だ。誰かと二人で出たからと言ってヒソヒソされる事も無い。私にしてみたら、その要因の一つには、私に恋人が居るという事もあるのだと思う。


「今日もブラックでいいか?」

「あ、はい。でも、私が」

「いいから。言っただろ?珈琲の一杯くらいで、どうこうしようとか企んだりしないから。安心しろ」

「はい。…ではご馳走になります」

「ん、それでいい。…ほい。あっちに座るか」

「有難うございます。はい」


「あの…課長、私、昨日、きちんとお礼言ってたかどうか、記憶が無くて。
ご馳走になりました、美味しかったです、有難うございました」

「そんな事は大丈夫だ。しかし、参ったよな、ビールには」

「あ、はい。そうでしたね。お店も手違いってやはりあるんですね」

「ああ、そうだな。人のする事だからな。…まぁ、滅多に無いだろうが。アルコールを誤って提供してしまったら、場合によったら訴訟問題になる事もあるかもな」

「そうですね。アルコールと知らず飲んでしまっては、運転もですが、体質で大変な事になる人もいますから」

「料理もそうだが、信用して飲食しているから成り立つんだよな。何か妙な物が入っているんじゃないかと思い始めたら、外食なんて出来なくなってしまうもんな」

「はい。気持ち悪くて食べられなくなりそうです」

「うん、そうだな」

…。

「あの、課長…」

「ん?」

「私、お話が…聞いて欲しい事があるんです」
< 64 / 166 >

この作品をシェア

pagetop